某チョコレートの日
22時から新宿でナンパ開始。
「こういう日こそ新規狙いにソロストします」みたいなことをドヤ顔でツイートしたくせに、
こういう日に限ってワークが殺人的で発狂しそうになる。
真っ赤な顔で仕事終わらせて、自宅帰って着替える時間も惜しかったのでそのままソロスト開始。
だが、やはり焦っているという心理状況は女性に伝わるようで。
30分真面目に声掛けしたのに全然ヒットせず。
何故?
皆バレンタインで彼氏とイチャコラしているのか?
まさかの坊主が頭をよぎる。
焦りは最高潮。
22:45。
絶望的な結果に落ち込み、
裏路地のガードレールに座りふー、とため息をつきながら休憩する。
すると、ふと歩いている女性が目についた。
さっと違和感を感じた。
別にキョロキョロしてないのに、ゆっくり歩いている。
顔と目線は下を向きながら。
スマホはいじっていないのに。
速攻ナンパ。
チバ「帰るとこ?」
女性『。。。』
チバ「落ち込んでる?どうしたの?」
チバ「何か嫌なことあったの?」
チバ「どこ向かってるの?西武新宿?」
反応無いが、ガンシカの雰囲気はなかったのでマシンガン継続。
すると反応あり。
女性『ごめんなさい、彼氏いるので』
で、ここからがっつり切り返し。
そっか、今日バレンタインだもんね。
さっき会ってきたの?と訊くと、会ってきた、と答える彼女。
チバ「え、そしたら解散するの早くない?」
ここで、彼女の空気が変わった。
ぴくっと反応したのが分かった。
チバは見逃さなかった。
並行トークをしていた中、さっと彼女の前に躍り出て、
止まって、のジェスチャーを仕掛ける。
立ち止めトークに以降。
『じゃあ、一杯だけなら』
チバの誘いに、しぶしぶといった感じで応じる彼女。
だが、なんとなく分かっていた。
彼女は何かを話したがっていた。
どこかでその引き金を引いたのだった。
そうして、徒歩でいつもの立ち飲みの店に連れ出しをした。
—
彼女は24歳の大学職員。
コートの下はニット。
仕事帰りにしては髪も化粧もしっかりしている。
お洒落していたことが分かる。
カクテルで乾杯をした後話を聞く。
彼氏と言っていたが、彼氏ではなく元カレだった。
学生時代に長く付き合っていた元彼氏。
最近ちょこちょこ会っていて、バレンタインだったので、
しっかりチョコと手紙を用意して今日会ってきたという。
だけど彼氏の家でもの凄く喧嘩してしまい。
結局大喧嘩は仲直りできず、そのまま早々に彼の家を出て実家のある西武新宿線沿いに向かおうとしていたところだったとのこと。
喧嘩の内容を訊いたけど、些細なこと。
喧嘩とはそういうもの。
真因は結局そこにはない。
もっと根底にある。
恐らく、彼女は元カレとの曖昧な関係(肉体関係有り)に不満を感じている。
ばーっと話す彼女。
うんうん頷きながら、決してバレンタインは幸せなカップルだけのイベントではないということを身に染みて感じる。
独身の人もいれば、既婚者でも全然楽しくない人もいる。
カップルでチョコを送りあって幸せな人達だっているだろうが、
こうやって元カレと喧嘩してしまう人もいる。
人によって、この日の色は違う。
スタンスとしては、ひたすら話を聞いてあげるスタンスを採用した。
ひたすら彼女に寄り添う。やんわりと肯定し、否定はしない。
最後まで話を聞く。
深いところまで聞けるようにどんどん質問して訊いていく。
そうして時間が過ぎていく。
チバ「○○はもっと幸せになるべきだよ」
ちょっとドキッとするセリフを吐いた後、退店。
で、肩を抱く。彼女が首をコテンとこちらに預けてくる。
そのままタクシーで自宅へ。
で、自宅INしてグダも無かったのだが、
最後の最後で。
彼女『付き合ってくれるの?』
一瞬固まる。
冷や汗。
切り返しのための演算モード突入。
彼女『付き合ってよ』
考える暇を与えてくれない。
彼女『付き合ってくれないの?』
チバ「俺悪い男だよ」
彼女『お願い』
チバ「痛い目見るよ」
彼女『チバさんは優しいよ』
チバ「そんなことないよ」
彼女『チバさんは優しいよ』
彼女『自分のこと悪い人って言う人って、優しい人だからそういうんだよ』
チバ「・・・」
結局、無言のまま行為を進めた。
ふたりとも言葉は交わさないで、身体で交わりあった。
じっくり時間をかけて、汗だくになって。
で、終わった後それぞれシャワーを浴びて、寝る準備をした。
明日始発で帰るからいい?と言われたので、アラームを早朝にセットした。
そして二人でベッドに入って、また交わった。
汗だくになるまで交わりあった。
二人で笑いながら、またシャワー浴びよっか、といい、シャワーを浴びた。
その後ベッドでずっとおしゃべりした。
今までの彼氏彼女のこととか。
一番楽しかった思い出とか。
ちょっとしてしまったイケナイこととか。
彼女がぶっちゃけ話をするから、こっちもぶっちゃけ話をした。
それがエスカレートして、暴露大会みたいになった。
ずっと爆笑してたけど、それが終わったらちょっとエッ○なムードになってきた。
結局その流れでまた交わってたら、セットしてたアラームがけたたましく鳴り始めた。
帰る、って雰囲気になったけど、彼女が帰りたくないと言い始めた。
仕事あるだろ、と言うと、じゃあ今夜も来ていい?と訊いてきた。
それはダメだと言った。
今夜は人が来るからって。
人って誰?彼女?と言われたから、
どうだろう、ってちょっとぶっきらぼうに答えた。
彼女は凄く寂しそうな表情を浮かべた。
でもこうやって言わなきゃいけないと思った。
マンションの1階エントランスまで見送った。
最後に、今夜は彼氏のところに行って仲直りしなよ、と言った。
彼女は何でそんなこと言うの?みたいな、呆れたような、軽蔑したような、そんな表情を向けてきた。
そんなのにはお構いなしに、大丈夫、○○は元彼のことちゃんと好きだよ、と言った。
めちゃくちゃ自信満々な感じで言った。
その勢いで、勢い良くグッドポーズを彼女に向けてした。
ついでにとびきりの笑顔も添えて。
たぶんかなりダサい感じだったと思う。
それを見て彼女はふふっ、ってちょっと笑った。
そのあと、ありがとう、と一言言った。
その後もう一回振り向いて、彼女はすっごい綺麗な笑顔を浮かべて「バイバイ」って言った。
彼女を見えなくなるまで見送った。
彼女はもう振り向いてこなかった。
連絡先は交換しなかった。
その方が良いと思ったから。
コメント
なんだか泣けてくる話。やっぱりナンパにはロマンがある。
>ホシさん
毎回ではありませんが、たまにあります。
いつも楽しく拝見しています。チバさんの口説き方はまるで合気道みたいですね。自意識の表現は最低限に、相手の力を最大限に引き出して、まるで相手の意志でそうなったかのように流れを作る。私はストナン未経験ですが、とてもダイナミックかつ思索的で勉強になります。これからも楽しみにしています。
>ジャガーさん
自分を含めた相手との空間を客観視することで上手くいくようになりました。
ぜひ一度ストナンの世界にいらしてください。
はまれば永久にはまり続けると思います。