美女を求めて仙台まで 前編


img_0










『その日大丈夫です^^ ぜひ飲みましょう!

とっても美味しい牛タンのお店予約しておきますね♪』







仕事の疲れが一気に吹っ飛ぶ感覚を味わった。

目の前が明るくなる。顔がにやける。

気分が、霧が晴れた空のようにぱーっと、明るくなる。







二ヶ月前。おれは結婚式の招待状を受け取った。

場所は仙台だった。

三連休の真ん中。

これは前後に観光をしろということだろう。

何をしようか考えた。





それは当然のことのようだった。
おれはある人のことを思い出していた。




現在仙台の支店に出向中の彼女のことを。

学生時代に仲の良かった彼女のことを。





おれが、好意を寄せていた彼女のことを。







学友たちから、事前にどこで遊ぶか、どこのホテルで泊まるかの連絡が来ていた。

おれは、一切返さなかった。

いや、返せなかった。

たった一人からの連絡を待っていたから。







彼女からのラインを受け取ったその日。

すぐに新幹線を手配した。

挙式の日より、2日も前の午後の電車。





金曜日の夜20時に間に合う電車を。







来る日。

おれは午前中で早退した。

午後18時。

おれは、仙台の地へと降り立った。













******





『あー、○○くん!久しぶりーーー!』



待ち合わせ場所でおれを見つけた彼女は、とても嬉しそうな声とともにこちらに駆け寄ってきた。


軽く握手を交わす。


「元気してた?あ、雰囲気変わったね」
『うん。元気だよ!○○くんこそ。全然雰囲気違う!びっくりしちゃったよ』











彼女についての話をしよう。



彼女は、大学時代の友人である。

同い年。学部は違う。共通の友人の知り合いを

通じて、彼女と知り合った。



彼女の容姿は優れていた。

それはもう、とびきりだ。

彼女は、とある研究会に所属しており、そこでは完全にアイドルだった。

学内のフリーペーパーにも掲載歴がある。

そして、才色兼備。

スト値は4。読者モデルクラス。

完璧な女性だった。





そんな彼女とおれが急速に近づいたきっかけは、

就職活動だった。

自然発生的に生まれたグループの中に彼女がいた。





そんな恵まれた環境にいながら、

おれが彼女に手を出さなかった理由は

たった一つだった。





彼女には彼氏がいた。

それだけだった。

今思えば大した理由ではない。

ただ、純粋だったその頃のおれは、

それだけで、彼女には一切手を出さず、

ただただ、内に秘めた好意を隠していた。







今回。ついに、彼女とサシのアポとなった。

おれには自信があった。

長年のナンパのテクニックを、

このアポイントに全てぶつけようと思っていた。



そうすれば。

彼女を落とせると考えていたから。









******







一軒目



彼女のおすすめの牛タン屋に行く。

ここで食事をしながら、近況報告をする。



内容は楽しいものだった。

だがおれはもうひとつ考えなければならないことがあった。

このアポを勝利に導く演算を、ひたすら続けていた。









二軒目





「雰囲気いいバーとか、さすがに知ってるでしょ?案内してよ」



少し強気に、彼女に言った。

『えー』と、少し困った顔をする彼女。

その真意は分かる。

男と行ったことがあるのだろう。

少し燃えた。嫉妬で。

「そこにしよう」

先を見透かして、強引に次の店の場所を決めた。







ここで一気に、恋愛トークに移る。

もう、学友同士の会話は先程の1時間で卒業した。

これからは大人の時間だ。

7:3の比率で喋らす。

シモネタトークも、もちろん。

手話は我慢した。

まだ早いと思った。

心の繋がりを彼女と作ろうとした。







三軒目



「あと一件行こう」

今度はおれが彼女をリードした。

仙台在住の友人から教えてもらった、

とっておきのバーだった。

もう、夜も更けている。

互いに深いところまで話した。

判定法。そろそろだ。







四軒目



「最後に、パーッと歌おう」

カラオケに入った。

おれは、ここで一気に攻めた。

1曲歌った後、突然のキス。

驚く彼女。

同時に、耳を刺激。

しっとりとしたキスを続ける。





キスが返ってきた。

手が、背中に回ってきた。

おれは、心が震えるのを感じた。

勝利を確信したからだ。







「場所、変えよっか」







甘く彼女にそう言った。

彼女が首を動かした。







見間違えではなかった。







彼女は首を左右に振った。

























~後編に続く~





・美女を求めて仙台まで 後編










コメント

  1. サイヤ人 より:

    続きまだですか?

  2. NONAME より:

    小説風ですね。
    後編期待しています。