『その日大丈夫です^^ ぜひ飲みましょう!
とっても美味しい牛タンのお店予約しておきますね♪』
仕事の疲れが一気に吹っ飛ぶ感覚を味わった。
目の前が明るくなる。顔がにやける。
気分が、霧が晴れた空のようにぱーっと、明るくなる。
二ヶ月前。おれは結婚式の招待状を受け取った。
場所は仙台だった。
三連休の真ん中。
これは前後に観光をしろということだろう。
何をしようか考えた。
それは当然のことのようだった。
おれはある人のことを思い出していた。
現在仙台の支店に出向中の彼女のことを。
学生時代に仲の良かった彼女のことを。
おれが、好意を寄せていた彼女のことを。
学友たちから、事前にどこで遊ぶか、どこのホテルで泊まるかの連絡が来ていた。
おれは、一切返さなかった。
いや、返せなかった。
たった一人からの連絡を待っていたから。
彼女からのラインを受け取ったその日。
すぐに新幹線を手配した。
挙式の日より、2日も前の午後の電車。
金曜日の夜20時に間に合う電車を。
来る日。
おれは午前中で早退した。
午後18時。
おれは、仙台の地へと降り立った。
******
『あー、○○くん!久しぶりーーー!』
待ち合わせ場所でおれを見つけた彼女は、とても嬉しそうな声とともにこちらに駆け寄ってきた。
軽く握手を交わす。
「元気してた?あ、雰囲気変わったね」
『うん。元気だよ!○○くんこそ。全然雰囲気違う!びっくりしちゃったよ』
彼女についての話をしよう。
彼女は、大学時代の友人である。
同い年。学部は違う。共通の友人の知り合いを
通じて、彼女と知り合った。
彼女の容姿は優れていた。
それはもう、とびきりだ。
彼女は、とある研究会に所属しており、そこでは完全にアイドルだった。
学内のフリーペーパーにも掲載歴がある。
そして、才色兼備。
スト値は4。読者モデルクラス。
完璧な女性だった。
そんな彼女とおれが急速に近づいたきっかけは、
就職活動だった。
自然発生的に生まれたグループの中に彼女がいた。
そんな恵まれた環境にいながら、
おれが彼女に手を出さなかった理由は
たった一つだった。
彼女には彼氏がいた。
それだけだった。
今思えば大した理由ではない。
ただ、純粋だったその頃のおれは、
それだけで、彼女には一切手を出さず、
ただただ、内に秘めた好意を隠していた。
今回。ついに、彼女とサシのアポとなった。
おれには自信があった。
長年のナンパのテクニックを、
このアポイントに全てぶつけようと思っていた。
そうすれば。
彼女を落とせると考えていたから。
******
一軒目
彼女のおすすめの牛タン屋に行く。
ここで食事をしながら、近況報告をする。
内容は楽しいものだった。
だがおれはもうひとつ考えなければならないことがあった。
このアポを勝利に導く演算を、ひたすら続けていた。
二軒目
「雰囲気いいバーとか、さすがに知ってるでしょ?案内してよ」
少し強気に、彼女に言った。
『えー』と、少し困った顔をする彼女。
その真意は分かる。
男と行ったことがあるのだろう。
少し燃えた。嫉妬で。
「そこにしよう」
先を見透かして、強引に次の店の場所を決めた。
ここで一気に、恋愛トークに移る。
もう、学友同士の会話は先程の1時間で卒業した。
これからは大人の時間だ。
7:3の比率で喋らす。
シモネタトークも、もちろん。
手話は我慢した。
まだ早いと思った。
心の繋がりを彼女と作ろうとした。
三軒目
「あと一件行こう」
今度はおれが彼女をリードした。
仙台在住の友人から教えてもらった、
とっておきのバーだった。
もう、夜も更けている。
互いに深いところまで話した。
判定法。そろそろだ。
四軒目
「最後に、パーッと歌おう」
カラオケに入った。
おれは、ここで一気に攻めた。
1曲歌った後、突然のキス。
驚く彼女。
同時に、耳を刺激。
しっとりとしたキスを続ける。
キスが返ってきた。
手が、背中に回ってきた。
おれは、心が震えるのを感じた。
勝利を確信したからだ。
「場所、変えよっか」
甘く彼女にそう言った。
彼女が首を動かした。
見間違えではなかった。
彼女は首を左右に振った。
~後編に続く~
・美女を求めて仙台まで 後編
コメント
続きまだですか?
小説風ですね。
後編期待しています。